烏山頭ダムを建設した八田與一技師は、石川県金沢市に生まれました。毎年5月8日の命日に営まれる慰霊祭には、台湾や日本から数百人の人々が烏山頭ダムに集まり、八田技師が建設に携わった烏山頭ダムと嘉南大圳が嘉南平原を台湾の穀倉地に変えた功績を讃え八田技師を偲んでいます。
2016年、台南市教育局は「台南市兒童家郷故事絵本創作」プロジェクトを立ち上げました。烏山頭ダムのそばにある嘉南国民小学校の児童らは、先生の協力を得て「看天田」という絵本を完成させました。絵本には八田與一技師が烏山頭ダムを建設した過程や、昔、田んぼに水が不足し農民たちが天を仰ぎながら農作業を行っていた大変な時代が描かれています。絵は全て嘉南国小の子どもたちが描き、文字は先生と子どもたちが一緒に創作したものです。
石川県の金沢泉丘高中一泉同窓会第15期の丸岡昭夫さん（73）は、嘉南国小の先生と子どもたちが作った絵本「看天田」を見て大変感動し、金沢市の子どもたちにも、自分たちの故郷の偉人が台湾で行った功績を知ってもらいたいと考えました。その後、台南市政府新聞処、同国際関係処、嘉南国小呂麗蓉校長、さらには台南市政府対日事務相談顧問の阿部真行氏など、多くの人々の協力を得、「看天田」の日本語版が完成し出版の運びとなりました。
「看天田」の日本語版は、石川県金沢泉丘高の同窓会「一泉同窓会」から金沢市の77ヶ所の小学校に寄贈されることになっています。八田技師の功績や台南市嘉南国小の児童たちによる素朴な絵本が、「看天田」の日本語版を通して八田技師の故郷である金沢市に伝えられることとなりました。以前より台南市は金沢市との交流を密に行っていましたが、絵本「看天田」の日本語版の出版により両市の歴史文化交流がさらに深まることとなりました。先人の物語は、絵本にして新たな世代に伝えることで、これからも伝わっていくことでしょう。